住学にも参加してくれている加藤建築の加藤さんが、手刻み、木組みによる伝統工法で自邸を作っていると聞きつけて、住学の番外編として構造見学会を開催しました。
大工の加藤さん。建て方、屋根の瓦葺きまで終えた現場を背景に。
瓦はもちろん新潟県産安田瓦。最近では珍しい鬼瓦も鬼師に頼んで作って貰ったとの事。カッコイイ!
住学内で募集した所、10名を超える方から参加して頂きました。皆さん、何らかの建築関係者です。
最初に加藤さんから伝統工法による建て方についてや、現在主流となっている工場プレカットによる家づくりとの違い、手刻み加工にかかる膨大な手間、そして何故伝統工法による家づくりを推奨しているのか、その熱い想いを話して頂きました。
その後は各自、加藤さんに質問をしながら見学をさせて頂きました。
文字通り、木組みの構造です。基本的に材料同士の緊結に金物は一切使いません。もちろん、現行の建築基準法的に最低限必要とされいる金物などは除きますが。
写真の所々に見える木の栓が特徴です。梁に柱を差し込んで、横から木栓を打つ。梁と梁の継ぎ目をかみ合わせて、木栓を打つ。木と木がかみ合う。
これこそ、古来より伝わる大工の叡智です。素晴らしい。
柱を貫通する様に横に組まれているのが貫(ぬき)と呼ばれる大切な構造材です。組んでしまうと分かりませんが、柱を横断するように横に一本通っています。
柱との隙間に木栓を打って、緊結。この貫と柱の緊結によって建物の横揺れを防いでいます。
ちなみに写真中央には耐力部材として用いられる筋交いという柱間に斜めに入っている部材がありますが、これは言ったらオマケです。笑
筋交いなどなくても貫工法によってこの建物は成立するそうですが、先ほどの金物のように現行の建築基準法だと最低限筋交いの様な耐力部材をバランス良く入れて下さいね、と規定されています。
本当は必要ないのに、法律で決まっているから入れなきゃいけないという。もはや、何だかバカバカしいですね…
何でこんな事になるのかというと、伝統工法はもうウン百年という歴史があります。いや、世界最古の木造建築と言われている法隆寺は1300年ですから、途方もない歴史を持つわけです。
で、建築基準法が制定されたのが1950年ですから、せいぜい70年程度の歴史しかありません。つまり、建築基準法が後。古来より続く伝統工法について全く対応出来ていないんですね。そもそも目的が違いますし。
でも、現行の建築基準法では一定の決まりがありますから、無理やりそっちに伝統工法を合わせていく必要が少なからずあります。う~ん。私は常々、まるでナンセンスだなぁと思っています。
基礎と柱の隙間には、土台がしっかり水平になるように硬木によるパッキンが。最近ではプラスチック製の物が用いられます。
基礎のコンクリートも、いくら精度が良かったとしても測るとやはり何㎜かは不陸があります。でも、伝統工法ではその数㎜の狂いが全体に影響を与える為、1㎜単位での水平調整を調整しなければいけないとの理由から、木にしているそうです。
土台上の床下地板。今ではベニヤが当たり前ですが、一枚板を使用していました。
しかも板の両側を加工し、雇い実(やといざね)という接ぎ方でキレイに。これだけでひと手間どころかなん手間も…
小屋組みの登り梁の端部の接合部、余り見かけない部材が。写真の「コレ」です。
斜めの登り梁と水平の梁を貫通しています。
加藤さんに聞くと「コレは自分で考えて作りました」と。ボルトなんか使わないんです。木で木栓打ち込むんです。痺れました!
登り梁上部と棟の納まり。これ、手刻みですよ?いや、手刻みだから出来るのか…こんなに隙間なくピッタリ組めるのかと感動しました。そして写っているうしろ姿は私です。小屋組みに見とれてる間に写真撮られてました。笑
ちょうど建物中間の土間部分。右側はしっかり断熱して、左側は昔ながらの無断熱空間にするそうです。エアコンもなし。で、土間に薪ストーブを設置との事。めっちゃいい!
玄関というか、入り口の土間。さっきの空間とL型に繋がっています。
ここでバーベキューとかやっちゃうみたいです。最高ですね!
入り口土間から無断熱となる部屋を眺める。
ここは天井を高くして、この素晴らしい小屋組みをあらわしにするそうです。
また、断熱は入れませんが土壁にして、夏も蔵の様に涼しく感じる空間を目指すとの事。素晴らしい。
最近でも表面にだけ漆喰や珪藻土などの塗り壁は採用する事もありますが、壁の中も本当の土壁にする事はほぼありません。私も実際作っているのは見た事ありません。
という事で「皆で土壁を作ろう!」ワークショップを開催する事が決定しました。ご興味のある方、近々告知しますので是非ご参加下さいませ!
という事で、個人的にはとても興奮した構造見学会でした。
何よりも、こうして実際に伝統工法で家づくりをしている大工さんに直接会えて、本当に嬉しかったんです。
もう10年近く前になりますが、当時勤めていた会社を辞めて建築事務所として独立開業し、自分にとって【家づくりとは】について向き合う時間が一気に増えた時期です。
そんなある時、伝統工法による家づくりの事を知って
「伝統工法がどう考えても一番良い(好き)!」
と言う所に行きつき、本を読んだり調べたりしていた時期がありました。
というのも、先ほども少し書いた通り現行の建築基準法では伝統工法に全く対応できていませんから、もちろん建築士としての知識に伝統工法はありません。当然、建築士になる為に通う専門学校でも伝統工法ではなく現行の建築基準法に合わせて現代の家づくりしか学びません。
自邸を伝統工法で建ててみたい。施主にもその素晴らしさを伝えて、伝統工法の家づくりをしてもらいたい。でも調べれば調べるほど、お金と時間と手間がかかる。そして経済的合理化の進む現代においては、社会にも求められていないと痛感しました。
勝手に憧れて、勝手に諦めたんです。まぁ未だに好きですので、その頃とはちょっと形を変えて古民家再生協会として伝統工法には関わってはいますが。笑
今回、加藤さんの自邸を見学させてもらい、加藤さんの熱い想いを聞いて、自分もまだ諦めなくていいんだと思えました。
とは言え、一般的にはなかなか難しいことも理解しているつもりです。でも、何とかして加藤さんと一緒に仕事ができる場を作れないか、模索して行きたいと考えています。
加藤さんの自邸、来年の春頃完成予定との事です。また、来月か再来月には土壁ワークショップも開催します。他にも工事中に皆で出来る作業があれば、加藤さんと相談して開催できたらなぁと思っています。
気になる方は、是非現地を訪れて体感して頂きたいです。実際に見て、加藤さんから話を聞いて、ちょっとでも「いいな~」って知って貰えると嬉しいです。
とこうして偉そうに記事を書いてますが、私自身全然伝統工法について知りません。まだまだまだまだ勉強不足です。
当時買った本を久しぶりに出して来て、読み始めました。いやぁ、建築って本当に面白いですね!
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